外国人観光客の増加が生むビジネスチャンスとリスク
2019年の大きなラグビー国際大会など、世界的なスポーツの祭典の日本開催が目前に迫っています。また、国が海外からの観光客誘致に力を入れていることもあり、今後も外国人観光客が増加することが予想されます。
首都・東京から至近で、多くの観光資源を抱える神奈川県にも多くの外国人の来日が見込まれるでしょう。外国人観光客の増加がもたらすビジネスチャンスとは、どのようなものでしょうか?今回は、神奈川県における訪日ビジネスのチャンスと、それに伴うリスクについて解説します。
2 訪日外国人数の増加によるビジネスチャンス
神奈川県は、「神奈川県観光振興計画」に基づき、観光施策を推進しており、近年の訪日外国人数の増加に伴い、観光分野を中心としたビジネスチャンスを見込み、世界的なスポーツの祭典を契機とする、国内外からの観光客誘致を目的とした「神奈川県観光魅力創造協議会」を設置しています。これは、行政団体のほか、旅行業団体や交通事業者、その他観光産業に関わるさまざまな団体によって構成された協議会です。官民が連携して、神奈川県の観光コンテンツの発掘と磨き上げ、周遊ツアーの企画・商品化に取り組んでいます。
出典:神奈川県ホームページ 神奈川県観光振興計画
(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ya3/cnt/f80022/p27758.html)
出典:神奈川県ホームページ 神奈川県観光魅力創造協議会
(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ya3/cnt/f80022/p1202216.html)
ほかにも、神奈川県では次のような計画が進んでおり、多様なビジネスチャンスが生まれています。
●宿泊インフラの充実
2017年の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の成立に伴い、民泊サービスの健全な発展を推進しています。また、補助金・税制措置・低利融資などの支援により神奈川県内への立地をサポートする企業誘致施策「セレクト神奈川100」では、ホテルの新設を支援しており、さらなる宿泊施設の充実を目指しています。
出典:観光庁ホームページ 住宅宿泊事業法
(http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/juutaku-shukuhaku.html)
出典:神奈川県ホームページ セレクト神奈川100の概要
(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/pw3/cnt/f534364/)
●幹線道路の整備
世界的なスポーツの祭典の日本開催に向けて、法人県民税・事業税の超過課税を活用した幹線道路の整備にも取り組んでいます。
●エグゼクティブツアーの企画および商品化
官民が連携して海外の富裕層を神奈川県に呼び込むための計画で、一般的なツアーにはないラグジュアリーな体験やヘルスケアなどを含んだエグゼクティブツアーの企画・商品化も促進しています。
●歴史をテーマとしたプロモーション活動
神奈川県では、鎌倉・大山(伊勢原)・横須賀・箱根と小田原が「日本遺産」認定されたことを受け、「日本遺産」を核とした県内全エリアの歴史をテーマとした観光プロモーション活動に取り組んでいます。
出典:文部科学省 日本遺産ポータルサイト
(https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/index.html)
3 ビジネスチャンスに伴うリスクとその対策
ビジネスチャンスが生まれることに伴って、考慮すべきリスクや課題も発生します。具体的には、どのようなリスクや課題が挙げられるのでしょうか?それぞれのリスクについて、対策と併せて見ていきましょう。
●訪日外国人が困っていることを知る
観光庁の調査によると、日本を旅行した外国人旅行者が困ったことに「無料公衆無線LANが少ない」「クレジットカードを使用できない/使えるかわからない」が上位に上がりました。つまり、これらの課題をクリアできればビジネスチャンスが広がる可能性があるわけです。無料のWi-Fiを設置や各種クレジットカードへの対応など、少しずつ環境を整え、受け入れ体制の充実を図りましょう。
出典:国土交通省 観光庁「外国人旅行者に対するアンケート調査結果について」
(http://www.mlit.go.jp/common/000190659.pdf)
●文化や慣習、宗教の違い
外国人は日本人とは異なる文化で育ち、衣食住あらゆる生活習慣もまったく違います。また、宗教を信仰している人が多いことも特徴です。たとえば、イスラム教徒はアルコールを飲めないなど、日本人とは別の対応が求められます。こういった違いがあることを従業員に共有しておくことで、無用のトラブルを避けることができるでしょう。
●多様化する外国人観光客のニーズへの対応
最近は体験・学習型観光が増えているほか、日本の映画やアニメ、スポーツや医療なども観光資源として注目を集めています。このため、従来の観光資源では誘客に失敗することが考えられるのです。多様化する外国人観光客のニーズを、的確にとらえる必要があるでしょう。
●観光振興をリードする人材の不足
観光ビジネスの機会増加に伴って、観光サービスにおける人材不足や、観光客に対する地域のホスピタリティの低下が考えられます。そのため、観光振興をリードする人材や観光サービスの担い手の育成が急務です。また、外国語による案内(人によるガイド、標識やパンフレットなど)の充実も不可欠です。
さらに、外国人労働者の増加も加速することが考えられますが、企業側での文化の違い等を考慮した受け入れ態勢を構築することが必要になるでしょう。
●安心・安全な観光事業の確保
震災や台風、感染症の流行、重大な事故などの発生は、安心・安全な観光に打撃を与えます。外国人観光客が安心して旅行を楽しむための安全の確保と、万が一の事態における的確な対処も求められるでしょう。
4 おわりに
神奈川県を訪れる外国人観光客の増加に伴い、旅行・観光分野を中心とした多様な産業に大きなビジネスチャンスが生まれます。この機を逃さず、行政や地域と密に連携して、海外へ積極的に情報を発信することで、大きな成功を得られるかもしれません。
ただし、チャンスが増える分、リスクも生まれます。想定される問題を回避するための手段の準備も大切ではないでしょうか。