海外出張の医療費はどうなる?海外渡航対策のポイント
1 はじめに
海外に行ったときの医療費は、日本と違って格段に高い場合があります。例えば、ニューヨークで盲腸の手術をすると、日本円に換算して公立病院ならば330万円、私立病院ならば440万円(当社調べ)かかるケースもあるようです。ですから、海外出張する社員が多い企業では、社員の健康管理もさることながら、もしものときの医療費を抑えるための対策が必要です。
ここでは、海外渡航の際に、どのような対策をとるといいのかについてご紹介します。
2 海外出張で起こりやすい健康にまつわるトラブル
海外出張のトラブルを大きく3つに分けると、「ケガや病気などの健康にまつわるトラブル」「手荷物の盗難や破損などのトラブル」「航空機の遅延・運休などのトラブル」が挙げられます。
AIG損保の2016年度事故支払件数実績データによれば、3つのトラブルの全支払件数のうち「健康にまつわるトラブル」の支払件数が約7割を占めています。例えば、現地の水や食べ物が合わず、胃腸の調子が悪くなった…というケースは軽いほうで、骨折や持病の悪化、盲腸といった突然の病気など、海外渡航中も日本にいるときと同様に、ケガや病気の可能性があるのです。そして、現地で手術や長期入院が必要となったり、医療専用機を使用しての帰国となったりした場合、日本では考えられないような高額な費用が発生するリスクがあります。
出典:「海外旅行で起こる身近なトラブル」(AIG損保 海外旅行保険)
(https://www-429.aig.co.jp/ota/service/example.html?p=oPG00402)
3 海外出張先でのトラブルに対する備えとは?
慣れない海外へ出張する場合、現地の文化や習慣を知らないため思いがけないトラブルに巻き込まれる可能性やリスクが高いといえます。そのためリスクをカバーする保険などの備えも万全にしておく必要があります。
海外出張中のケガや病気で病院にかかる場合、労災保険か事前に加入しておいた海外旅行保険で支払いを行うことになります。それぞれ、どんな違いがあるのかを見ていきましょう。
●労災保険
海外出張中のケガや病気を、日本国内における仕事中の傷病と同様に、労災保険を適用するというケースもあります。労災保険の場合、海外で診療を受けた際に、いったん全額自己負担で支払い、帰国後に保険給付の申請を行うことになります。
参考
出典:厚生労働省HP
FAQ:海外出張先で事故に遭った場合、労災保険の適用はどうなるのでしょうか。
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei51.html)
●海外旅行保険
民間の海外旅行保険に事前に加入しておくことで、海外出張中のケガや病気の補償を受けられます。現地の病院では現金不要で受診できるというメリットがあるため、基本的には海外旅行保険を利用する出張者が多いです。現地の医療事情や加入している海外旅行保険の契約内容を、事前に確認しておくことが大切です。
4 労災保険が適用されるのは?
海外出張中に起こった災害に対する、労災保険の適用範囲についても確認しておきましょう。
海外で病気やケガをした場合、国内と同様に労災保険が適用されます。なお、海外での治療費は国内における保険診療の対象になっているものに限られており、国内で保険適用となっていない医療は対象となりません。また、次のような場合、労災保険は適用対象外となりますのでご注意ください。
- 海外現地法人への出向であった場合
- 海外支店への転勤の場合
- 観光や食事など、出張中のプライベートな時間に起こった災害であった場合
なお、社長や役員の場合は、国内同様、労災保険は適用対象外となります。
5 おわりに
海外出張中は、滞在期間の長さにかかわらず、病気やケガなどのリスクがあるということを忘れてはなりません。企業の責任として、社員の万が一のときに備え、海外旅行保険に加入することをおすすめします。
海外旅行保険であれば、治療や救護にかかる高額な自己負担のリスクをカバーするプランだけでなく、手荷物や航空機にまつわる海外出張に多いトラブルへの補償も可能です。
その上で、海外出張を控えた社員には、渡航前から健康管理を徹底してもらうよう、呼びかけることも忘れないようにしましょう。